Listening Library
American Short Stories

English

 

フェザートップ (ナサニエル・ホーソン)

 

T  

E01


「アメリカの声」が、特別英語によるアメリカの短編小説をお送りします。物語の題名は『フェザートップ』です。原作者はアメリカの作家ナサニエル・ホーソンですが、きょうは特別英語でお送りします。『フェザートップ』は魔女 -- つまり魔法の力を持った女性 -- によって人間に変えられたかかしの物語です。かかしのフェザートップは美しい少女と出会って恋に陥り、本物の人間になりたいと思うまでは幸せでした。ところが、本物の人間になることはできなくて、もとのかかしにもどります。では、ルー・ローランドが『フェザートップの物語』をお伝えします。

 

T  

E02


長い冬がやっと過ぎました。初めのうちは夜の寒さが少しずつ和らいでいきましたが、急に暖かい春の日がやってきました。地中に新しい生命が再びみなぎり、何もかもが成長して顔を出し始めました。最初にとうもろこしの緑の芽が見えてきました -- 土を突き抜けて顔をのぞかせた芽が、今では地面の上に見えるようになりました。

 

T  

E03


長い冬の何か月かが過ぎると、からす -- つまり、あの大きな黒い鳥たちはおなかがすいていましたので、この小さな緑の芽を見かけると、舞い降りてきては食べるのでした。リグビーばあさんは、このやかましいおなかのすいた鳥たちを追い払おうとしました。この鳥たちは、おばあさんをすっかり怒らせてしまったのです。彼女は、黒い鳥たちに自分のとうもろこしを食べられたくはないのです。彼女はとうもろこしが大きくなったら、自分で食べるつもりだったからです。ところが、鳥たちはどうしても逃げていかないのです。そこで、ある朝早く -- 太陽が昇り始めるころ、リグビーばあさんはベッドから飛び出しました。彼女は、あの黒い鳥たちに、自分のとうもろこしを食べさせないようにする方法を考えついたのです。

 

T  

E04


リグビーばあさんは魔女 -- つまり、不思議な力を持った女性ですから、なんでもできるのです。彼女は水を丘の下から上へ向けて流すこともできますし、美しい女性を白い馬に変えることもできるのです。よく満月が明るく輝いている夜などには、長い木の棒にまたがって、村の家々の屋根の上を飛んでいく彼女の姿を見ることができます。その棒というのはほうきの柄のことなんですが、彼女はこの棒があるからこそ、あらゆる種類の魔術を行うことができるのです。

 

T  

E05


リグビーばあさんは大急ぎで朝食をすませると、このほうきの柄で仕事にとりかかりました。彼女は、人問の姿に似た物を作るつもりだったのです。これを作れば、鳥たちは恐れをなして彼女のとうもろこしを食べなくなるでしょう。これは、大抵の農夫がこのやっかいな黒い鳥の害を防ぐ方法です。

 

T  

E06


リグビーばあさんは、素早く仕事を進めました。彼女は魔法のほうきの柄をまっすぐに立てて持ち、それにもう一本の木切れを横にして結びつけました。これで早くも両腕のある人間の姿に似てきました。それから彼女は頭をこしらえました。かぼちゃ -- フットボールくらいの大きさの野菜の一種ですが、これをほうきの柄の先に取り付けたのです。彼女はかぼちゃに穴を2つあけて目を作り、少し下のほうに、もう一つ口のように見える穴をくり抜きました。

 

T  

E07


さあ、これで出来上がりです。彼はもういつでも、リグビーばあさんのために仕事に出かけていって、あの黒い鳥たちに、リグビーばあさんのとうもろこしを食べさせないようにする準備が整いました。しかし、リグビーばあさんは自分が作ったものに満足できません。彼女はいい仕事をする腕を持っていましたので、もっともっとりっぱに見えるかかしを作りたいと思いました。彼女は紫色のコートを作ってかかしに着せ、白い絹のストッキングをはかせました。彼女はかかしの頭をにせの髪と古い帽子で覆い、その帽子に 鳥の羽をくっつけました。

 

T  

E08


彼女はかかしをつくづくとながめていましたが、こうして美しいコートを着て帽子にりっぱな羽をつけたかかしがすっかり気に入り、彼の名を「フェザートップ」と名づけました。

 

T  

E09


彼女はフェザートップをながめていると、楽しくなって笑い出しました。「彼はなかなかの美男子だわ」彼女は思いました。「さあ、何かしら」考えてみると、まだ物足りなく感じるのです。彼女は、フェザートップがかかしにしてはできすぎているように思えたのです。「彼には、からすを脅かすために夏中ずっととうもろこしのそばに立っているよりも、もっとましなことができるわ」彼女は思いました。彼女は、フェザートップにもう一つ何かしてやることにしました。

 

T  

E10


彼女は自分が吸っていたたばこのパイプを取って、フェザートップの口にくわえさせました。「吹かすのよ、ねえ、吹かしてごらんなさい」彼女はフェザートップに言いました。「さあ、おりこうさんだから、ぷかぷかと吹かすのよ。吹かしている限り、おまえは生きていられるのよ」

 

T  

E11


フェザートップの口から煙が上り始めました。初めのうちは、ほんのわずかの煙でしたが、フェザートップが一生懸命吹いたり、吹かしたりしたので、だんだん多くの煙が彼の口から出てきました。「どんどん吹かしてちょうだい、私のかわいい坊や」リグビーばあさんはすっかりうれしくなって言いました。「さあ、だいじな坊や、ぷかぷかやってごらん。いいかい、吹かすのよ。おまえの命なんだから」

 

T  

E12


それからリグビーばあさんは、フェザートップに歩くように命じました。「前へ進みなさい」彼女は言いました。「おまえの前には世界が広がっているのよ」フェザートップは片手を前に出して、何か支えになるものはないかと捜しました。それと同時に、かかしは片方の足をやっとの思いで前へ押し出すようにしました。しかし、リグビーばあさんが大声でどんどん歩けと命じますので、彼はまもなく前進し始めました。そうすると、おばあさんは言いました。「まるで人間みたいだね。歩き方も人間そっくりだし…。今度は人間みたいに話すことを命じるわよ」

 

T  

E13


フェザートップは、はあはあ言いながら苦心したあげく、とうとうひそひそ声で言いました。「かあさん、ぼくは話したいと思ってるんだけど、脳みそがないから、なんと言っていいかわからないんだよ」「ほうら、話せるじゃないの」リグビーばあさんは言いました。「さて、何を話させてあげようかね。決して恐れることはないんだよ。おまえは世間に出ていくと、たくさんのことを話すようになるだろうし、何度も同じことを話すようになるんだよ。でもね、何度も繰り返し繰り返し話していても、実際は何も言っていないのと同じなのさ。だから、ただ小鳥がさえずるようにおしゃ べりをしていればいいんだよ。おまえにだってその程度の脳みそは、だいじょうぶあるんだから」

 

T  

E14


リグビーばあさんは、フェザートップにお金をたくさんあげました。そして、こう言いました。「さあ、もうこれで、おまえはだれにも負けないりっぱな人間になったんだから、堂々と胸を張っていればいいんだよ」

 

T  

E15


しかし、おばあさんは彼にパイプをなくしてはいけないこと、パイプの煙を絶やしてはいけないこと、などを厳重に言い渡しました。彼女は、もし彼のパイプの煙が絶えるようなことがあったら、彼は地上に倒れて、ただの1束の棒切れにもどってしまうだろうと警告しました。「心配しなくていいよ、かあさん」フェザートップは大声で言うと、口から大きな煙の塊を吐き出しました。「さあ、お行き」リグビーばあさんは、フェザートップを玄関から外へ押し出しながら言いました。「世界はおまえのものなのよ。もしだれかがおまえの名前をたずねたら、ただフェザートップと言えばいいんだよ。帽子に羽がついてるだろう、それにおまえの頭の中にも羽をひと握り入れてあるからだよ」

 

T  

E16


フェザートップが町へ出てみると、通りには人気がありませんでした。そのうち、町の中でも特ににぎやかな通りの一つを歩いていくと、大勢の人たちが彼を見るようになりました。人々が見ていたのは、彼の美しい紫色のコートや、白い絹のストッキングや、彼が左手に持っていたパイプでした。彼はこのパイプを、5歩歩くごとに口にくわえなおしていたのです。みんなが彼のことを、たいへん偉い人が町を訪れているのだと思っていました。「なんとりっ ぱな気品のある顔をしたお方だろう」ある男の人が言いました。
「きっと偉い人なんだ」別の人が言いました。「偉大な指導者にちがいない」

 

T  

E17


フェザートップが町外れに近いもっと静かな通りを歩いていきますと、とても美しい少女が小さな赤いれんがの家の前に立っているのが目につきました。小さな男の子が少女の横に立っていました。美しい少女がフェザートップにほほえみかけますと、彼女の心に愛情が芽生えました。そのせいで、彼女の顔全体が太陽にパッと照らされて、明るく輝き始めました。

 

T  

E18


フェザートップは彼女を見つめていると、今までに経験したことのない気持ちに襲われるのでした。急に彼には何もかもが少し変わって見えるのでした。辺りは不思議な興奮で包まれました。道路には太陽がさんさんと輝き、通りを行く人々は踊りながら通り過ぎていくように見えました。フェザートップは衝動にかられて、ついこのほほえんでいる若くて美しい少女のほうへ歩み寄りました。彼が近づくと、彼女の横にいた男の子がフェザートップを指さして言いました。「 ポリー、見てごらん、この人には顔がないよ。かぼちゃじゃないか」

 

T  

E19


フェザートップはそれ以上近づくのをやめて回れ右をし、町の通りを通って大急ぎで自分の家に向かいました。リグビーばあさんはドアを開けますと、そこに、感情の高ぶりのために震えているフェザートップを見かけました。彼は辛うじてパイプを吹かしていましたが、棒切れがガタガタいう音、あるいは骨がガラガラいうような音を立てていました。「一体、どうしたの」リグビーばあさんは言いました。「かあさん、ぽくは何ものでもないんだね。ぼくは人間なんかじゃなくて、ただの ぷかぷかした煙なんだね。ぼく、煙なんかじゃなく、何かほかのものになりたいよ」こう言うとフェザートップはパイプを取って、それを渾身(こんしん)の力をこめて床の上に投げつけました。彼はその場に倒れ、かぼちゃの顔が壁のほうへ転がっていくと、1束の棒切れとなりました。「まあ、かわいそうなフェザートッ プ」リグビーばあさんは、床の上の積み上げた束を見て言いました。「あの子はかかしにしてはできすぎていたし、人間にするにもできがよすぎたんだわ。でも、彼はこれからは、夏中とうもろこしのそばに立って 鳥たちからとうもろこしを守っていれば、もっと幸せになれるんだ。だから、もう一度あの子をかかしにしてやりましょう」

 

T  

E20


ナサニエル・ホーソン原作のアメリカの短編小説『フェザートップ』をお送りしました。「アメリカの声」では来週もこの時間に、特別英語による次のアメリカ短編小説をお送りします。

 


日本語訳 Tsuneo Kimura

 

 

[TOP]

 

Home About eigozai Word Book English USA Listening Library